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静岡地方裁判所 昭和48年(ワ)315号 判決

主文

一、原告らの請求を棄却する。

二、訴訟費用は、原告らの負担とする。

事実

(請求の趣旨)

一、当裁判所昭和四八年(ヌ)第一二号不動産競売事件につき、作成された配当表のうち、被告に配当すべき部分を取り消し、これを原告らの配当とする。

二、訴訟費用は、被告の負担とする。

との判決を求める。

(請求の原因)

一、請求の趣旨記載の不動産競売事件(以下本件という)につき、別紙のとおり配当表が作成された。

二、けれども、被告の配当要求は、次の理由により違法である。

(一)  被告の配当要求の申立は、再競売期日の三日前である昭和四八年七月二三日になされたものであつて、訴外協和商事株式会社において競落した期日である昭和四八年五月二三日以降に行われたものである。

(二)  被告の配当要求債権のうち、額面七九万円、支払期日昭和四七年一一月二日、振出日同年一〇月一六日の約束手形(甲第四号証)債権は、右手形が支払のための呈示なく、無効なものである(本項の主張は、原告小沢のみ)。

三、よつて、右配当表中被告に対する配当額を取り消し、これを原告らの配当とする旨の判決を求める。

(答弁の趣旨)

一、主文と同旨の判決を求める。

(請求の原因に対する答弁)

一、請求の原因中、一項は認め、二項本文は否認し、二項の(一)の事実を認め、同項の(二)は否認する。

二、被告の配当要求は、再競売期日の三日前までになされているから、適法である。

三、原告主張の手形(甲第四号証)は、他の手形と同様手形交換所を経由して支払場所に呈示されている。

四、仮に、右手形の呈示が認められなかつたとしても、本件配当要求申立書副本に右手形の写を添付して右手形の振出人に送達されているから、右送達をもつて呈示があつたものとみなされるべきである。

(立証)(省略)

理由

一、請求の原因一項および二項の(一)の事実は、当事者間に争いがない。

二、民事訴訟法六四六条二項によれば、不動産競売における配当要求は、競落期日の終了に至るまで許されることになつているところ、再競売が実施された場合には、第一次の競落期日終了後再競売における競落期日の終りまでの間にも、配当要求が許されるとするのが通説的見解であり、また実務上もこの取扱をしているものとおもわれる。

三、これに対し、反対説は、第一次の競落許可決定によつて配当金額が確定し、右競落期日後の配当要求債権者については、再競売手続が実施されなければ、もともとその競落代金からの配当が受けられなかつたにもかかわらず、たまたま再競売手続が行われたことによつて配当加入を許容することは、不合理であるという点にあるとおもわれる。

四、しかしながら、一般債権者間の平等主義を採用する我が法制のもとで、配当要求の終期を競落期日の終りまでに限定する同条の法意は、もつぱら競売手続の遅延防止のために配当要求に一応の限界を画したにとどまり、第一次の競落期日までの配当要求債権者に対し、特別の優先権を与えたものと解することは妥当ではなく、再競売手続が行われたときは、さらにその競落期日の終りに至るまで配当要求が許されるものと解するのが相当である。

従つて、本件配当表が違法であるという原告の主張は、採用できない。

五、成立に争いのない甲第四号証および弁論の全趣旨によれば、原告小沢の主張する金額七九万円の手形(甲第四号証)が、手形交換所を経由して支払呈示期間内に支払場所に呈示されたことを認めることができる。従つて、右原告の右手形未呈示の主張は、採用することができない。

六、よつて、本件配当表の被告に関する部分は正当であるから、原告らの本訴請求は、失当として棄却すべく、民事訴訟法八九条を適用して、主文のとおり判決する。

別紙

〈省略〉

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